Partager

第三話 絶望からの出会い

last update Date de publication: 2026-03-17 07:30:09

「昌浩、何を言ってるの? 明日は私たちの結婚式なのに……」

濡れた髪が顔に張り付き、綾はみっともない姿で震えていた。

「結婚式は取りやめだ」

昌浩は言った。

「美奈はもう僕の子を身ごもっている。長男が噂の中で生まれるわけにはいかない。今夜のことは──お前が先に彼女を突き落としたんだ。僕たちの間には……もう話すことはない」

──何かの間違い。

綾がまだ問い詰めようとしていると、美奈が突然

「お腹が痛い」と言い出す。

昌浩は美奈を連れてその場を去る。

綾が追おうとすると、継母に強く平手打ちされ、倒れ込み酷くみっともない姿になる。

継母は上から綾の手首を踏み付け、激しく責め立てる。

「この毒婦め! わざと美奈を突き落として、お腹を痛めさせるなんて、お前の早くに死んだ母親と同じで冷酷非情だね!」

「ウウッ、やめて……」

一言一言が刃のように鋭く、更に公然と綾を嘲笑する。

──どうして? なぜ私が悪いの?

「お前、自分の姿を鏡で見てみろ。一人も母に愛されず、誰からも愛されない野蛮な子種め。

昌浩の家と縁組する資格なんてない。平井家の全ては本来美奈のものだ。お前はただの巣を奪った盗人に過ぎない」

継母の言葉は耳をつんざくように酷く、悪意の限りを尽くす。

綾は全身を震わせ、血の繋がった父を振り返り、公平な言葉を求めるが、父は顔をそむけ、視線を逸らし、沈黙を守る。

──全部知ってたの?

父は明らかに継母の行為を黙認し、昌浩と美奈の婚約を認め、平井家と綾には関係ないことを容認したのだ。

綾の心に残っていた最後の期待は、完全に打ち砕かれる。

周囲の見物客はざわつき、囁き合い、指を差し、誰も綾の苦境に同情しない。

──どうして誰も味方がいないの?

残るのは嘲笑と興味本位の視線だけだ。

綾はこの窒息しそうな光景に追い詰められ、崩壊寸前になる。

ただ逃げ出したい──彼女は全身の痛みを顧みず、必死で立ち上がり、狂ったようにパーティ会場の門を飛び出す。

しかし門を出た瞬間、疾走してきた車に激しくはね飛ばされ、重く地面に叩きつけられる。

意識が遠のく中、彼女の目に微かに映ったのは、昌浩が慎重に美奈を抱き、救急車へ駆け込む姿。

一度だけ目が合ったのに、昌浩は無視をした。

その後振り返ることは一切なく、助けを求めようと口を開けるが声は出ず、倒れた自分に気づく者もいない。

綾は、生きる気力を失いつつある。

絶望が潮のように押し寄せ、彼女は、このまま自分は死ぬのだと思った……。

彼女が再び目を開けると、白い天井、病院のベッドに横たわっていた。ピッピッと心拍数を測定する音だけが響き渡っている。

その傍らには、見知らぬ男性が座っている。

彼女の目覚めを確認すると、余計な挨拶もせず、すぐに扉の外に向かって叫んだ。

「お坊っちゃま、彼女が目を覚ましました!」

すると、扉の外から一人の男性が入って来た。

この病室には似つかわしくない、彼のその姿は、キラキラと輝き、まるでモデルかのように見惚れてしまうほど美しい。

彼のその長身と端正な顔立ちからは、現実離れしたような圧倒的なオーラが放たれていた。

漆黒の瞳は、どんな感情も読み取らせないほど深く、見つめられると時間が止まったかのような感覚に襲われる。

彼はただそこにいるだけで、絶対的な存在感を放っている。

この人は、いったい誰なのだろう……

するとその時、続けて同じドアから今度は綾の親友、美樹が入って来た。

「綾──! 大丈夫?!」

美樹は、綾の意識が有ることを確認すると、少しだけ安堵の表情を浮かべ涙ぐんでいる。

そして、ようやく隣りに立っている圧倒的オーラに包まれた美しい男性の方に目を奪われ固まっている。

もう一度綾の方を見て、

「どなた?」と聞いている。

綾にも分からず、ただ首を傾げている。

いったい誰なのだろう。

Continuez à lire ce livre gratuitement
Scanner le code pour télécharger l'application

Dernier chapitre

  • 結婚式で捨てられた後、私は彼の最大のライバルと結婚した   番外編③ 森川と美樹の……

    バスルームから走って出て来た蓮。 「ママ〜」 「こら蓮まだちゃんと拭けてないぞ」 追いかけて来た修。 ──!! 美樹は、思わず修の身体に唾を飲む。 綾が蓮を捕まえ──「蓮〜捕まえた! 修さんこそ、そんな格好で」 修は腰にバスタオルを巻き、鍛えられた胸板が丸見え、筋肉の間には雫が滴り落ち色気が漂っている。 「社長〜〜」 バスルームから森川が呼んでいる。 「おお〜今行く」 今度は由愛を抱っこして出て来た。 美樹は又修に釘付けになっていたが、 「あっ、綾私が……」と美樹が蓮の身体を拭いてくれたので、綾が由愛を抱っこした。 美樹は──「頭がびしょびしょだぞ〜」と蓮を笑わせながら、拭いてくれている。 森川がドライヤーを持って来てくれたので、蓮の頭を乾かしてくれている間に、美樹が蓮と歌を歌いながら楽しくパジャマを着せてくれた。

  • 結婚式で捨てられた後、私は彼の最大のライバルと結婚した   番外編② まさかのゲストに困惑する

    〈今から帰るね〉 綾は、修にメッセージを送ったが既読が付かない。 「外でお散歩でもしてるのかしら? それとも一緒にお昼寝でもしてる?」 美樹も微笑んでいると森川から、 〈出張お疲れ様、社長に呼ばれてお宅にお邪魔してる〉とメッセージが届いた。 「わ、本当に森川さんにお願いしたのね」 「どうせ暇だったから良かったんじゃない?」 「ごめんね、せっかくの休日に」 「ううん、大丈夫よ」 同じ職場同士だから、こういう時は理解があって助かる。 帰り道にあるお店に寄ってお土産を買うことに。 「これ可愛い」 綾は結局子どもたちの物ばかり選んでいる。 母親とは、離れていても自然に子どもの物ばかり選んでしまうようだ。 子どもたちに早く会いたくなったので、急いで帰ることに……。 ベビーシッターはお休みだが、そろそろお手伝いが夕飯の準備に来てくれる時間。 綾は──せっかくだから、美樹と森川にも一緒に夕飯を食べてもらうことにした。 帰りの車中、 綾は美樹に──「美樹たち子どもはどうするの?」

  • 結婚式で捨てられた後、私は彼の最大のライバルと結婚した   番外編① ママの出張

    由愛が生まれて6ヶ月が過ぎた。 二人目だということもあって、綾も修も随分子育てに慣れて来た。 長男の蓮の時、修は…… 「ママ〜蓮がうんちしてるみたいだ」と必ずと言っていいほど、綾を呼んでいた。 綾は呆れた様子で、 「パパ! そろそろうんちでもオムツ交換してくれないかなあ?」 「だって、蓮が『ママが良いれしゅ〜』て言ってるから」 「そんなこと言えるわけないでしょ! ったく」 修は、いつも笑って誤魔化していた。 仕事に行っている間は、ベビーシッターに任せきりなので、帰って来たら二人で頑張ろうと話し合ったのに……。 でも、おしっこだけの時には交換してくれるようになったので大進歩だ。 しかし──「うわーっ!」と修の声がしたので、 慌てて綾が見ると……修は蓮におしっこを飛ばされて、それを両手で受け止めていた。 「ふっふふ、男の子はそうやって飛ばされるから気をつけてね」 「どうしてそれを先に言ってくれないの〜」 修が情け無い顔で綾を見ている。 「ふっ」 綾は──修も体験して初めて分かるだろうと思っていたのだ。 それからは、気をつけているようだ。 「やれば出来るじゃない」 褒めると嬉しそうな修──褒められて伸びるタイプのようだ。 「すご〜い! 上手〜」 綾は──それからは、やたらと修を褒めている。 ただ……いつ

  • 結婚式で捨てられた後、私は彼の最大のライバルと結婚した   第百五十四話 幸せな結婚

    ────8ヶ月後 「綾!」 修が急いで病院に駆けつけたが…… 「もう生まれちゃった」 綾は笑っている。 二人目はお産の進行が早いと聞いていたが、思っていたより早かったようだ。 綾の腕には可愛い女の子が抱かれている。 「おお〜可愛い姫だな」 「蓮は私に似て来たけど、この子は修さんに似てるわね」 命名 由愛(ゆあ) 生まれる前から決めていた。 「どちらに似ても美男美女だよ」 「ふっ、自分で言う?」 笑っていると、又ゾロゾロと天埜家御一行様が由愛を一目見ようとやって来た。 ──どうしてそんなに耳が早いのよ 「綾さんご苦労様、まあ可愛いわね」 義母が言うと、 「おお、今度は可愛い姫だな、可愛いの〜わしも長生きしないとな」お祖父様が目を細めている。 義母は、家に来るたび、蓮にオモチャを持って来ている。 綾は修に──「オモチャはもう要らないの! 修さんから言ってくれない?」 「分かった」 そう言っても義母は、「可愛いからつい買ってしまうのよ」とお構いなしで買って来る。 綾のス

  • 結婚式で捨てられた後、私は彼の最大のライバルと結婚した   第百五十三話 結婚式とまさかの……

    美樹が──「修さん!」と綾の話に驚いている。 でも、「可愛い〜」と言うので、絶対に森川さんには言っちゃダメよと口止めをする。 すると、 「綾」 「ん?」 「私、結婚する!」と美樹が薬指に嵌められた指輪を綾に見せた。 「わ、おめでとう〜」 森川が修と綾の姿をずっと近くで見て来て、可愛い息子も生まれたことで結婚は良いものだと思ったようで、美樹にプロポーズをしたのだ。 美樹も森川とならと思っていたので了承したのだと。 今後この二人の結婚生活も楽しみだ。 綾が修に伝えると──「ああ、森川から報告を受けた。良かったな」 「ええ、楽しみね」 ──── その後涼太は、すぐに希を認知したようだ。 何度も来日し、購入した別荘で過ごしていた。 時々ご両親も一緒に来られて、希に会いに行っていたようだ。 そして、ついに…… 希との同居が認められたようだ。 希のことを考えると、涼太の籍に入れた方が良いだろうということで、涼太は美奈に会いに行った。 美奈もその方が良いと判断し、「お願いします」と頭を下げたのだと。 涼太は美奈に──「ずっと待ってるから」そう言うと、美奈は涙を

  • 結婚式で捨てられた後、私は彼の最大のライバルと結婚した   第百五十ニ話 綾の思い、修からのプレゼント

    修はソファーで綾の肩を抱きながら、綾に感謝の言葉を述べた。 「綾」 「ん?」 「本当にありがとう」 「!! 何? どうしたの?」 綾は驚き隣りから修の顔を見上げている。 そして、修は真剣な眼差しで──出産がどれほど大変なことなのかを自分なりの解釈で熱弁した。 もちろんそこには、綾が陣痛の時に握った修の腕の爪痕の話やスイカの話も盛り込み、出産は男には経験出来ないとても壮絶なことなのだと話した。 綾はポカンとしたが…… 「そうよ、ホントに痛いんだから」 「そうだね、俺の子を産んでくれて本当にありがとう」と言った。 「ふっ、俺の子じゃなくて俺たちの子ね」 「ああ、そうだ俺たちの子」 修があまりにも感謝しているので、ここぞとばかりに綾は──「修さん」 「ん?」 「子育ては、やっぱり両親揃って取り組む方が良いと思うのよ」 「もちろんそうだ!」 「そうよね〜なら子ども服を扱う天埜社の社長が子どものオムツ交換の仕方を知らないなんてことないわよね?」 ──!! まさか綾…… 綾はニヤッと笑いながら、 「修さ〜ん、蓮が起きたらオムツ交換やってみようか?」と促す。 「ハハッ、おお任せろ」 「ふっ」 まだ蓮が寝ていると思ってニコニコしていた修だが、突如──ブリブリッという音と共に、蓮が泣いた。

  • 結婚式で捨てられた後、私は彼の最大のライバルと結婚した   第五話 二人の出会い

    ──天埜修 視点── 「あっ! 危な────い!」 運転手の倉田が大声を上げる車内。 キキ────ッ 急ブレーキをかけた車は、急停車した。 「どうした?」 慌てながら心配そうに、倉田に声を掛ける天埜。 綺麗に着飾ったドレス姿の女性が突然、道路に飛び出して来て事故が起きた。 その場に倒れ込んだ女性に運転手が駆け寄り、謝罪しようとしたが、 突然意識を失ってしまった。 その後救急車が来て、その女性は病院へと運ばれて行った。 周りに居た人に、被害者の詳細を聴き調査する秘書の倉田。 彼女が平井綾だと分かった。 平井家と天埜グループは、直接の競合関係にはない

  • 結婚式で捨てられた後、私は彼の最大のライバルと結婚した   第四話 決心

    「……え──っと?」 綾は驚きながらも、その男性に尋ねるが、美樹は固まったままだ。 「……初めまして、天埜修です。こちらは私の秘書、倉田です」 強大なオーラ、圧迫感──その姿だけで病室の空気が一気に重くなる。 美樹はすぐにスマホで彼の情報を検索し、画面には──天埜グループの若き実権者、業界屈指の人物の名前が表示

  • 結婚式で捨てられた後、私は彼の最大のライバルと結婚した   第二話 婚約は、解消しよう

    綾がプールへと落ちた刹那、意識は凍りつくような恐怖に襲われた。 十七歳のあの年の記憶の断片が激しく押し寄せる ──制御を失った車、砕け散るフロントガラス、最後の力で彼女を水面へと押し上げた母の手、そしてすべてを呑み込む果てしない青。 彼女は水が怖い。骨の髄まで染みついた恐怖。 それを、美奈は誰よりもよく知っている。 義妹とは言え、綾は本当の姉妹のようになろうと思っていた。 ──助けて! 恐怖で身体は強張り、必死にもがいても虚しく、水が口と鼻に流れ込み、視界は揺らめく水の光で白く滲む。 窒息しかけた絶望の中、揺れる水面越しに、ためらいなく飛び込んで来る人影が

  • 結婚式で捨てられた後、私は彼の最大のライバルと結婚した   第一話 裏切り

    綾のシャンパングラスを握る指先には、 わずかな白さが滲んでいた。 今夜は彼女の婚約パーティー。 だが、婚約者の昌浩はすでに三十分も姿を消している。 周囲の名士たちの祝辞は、潮のように押し寄せては耳障りに響く。 そのとき── 本来なら"未来の花嫁“である彼女をしっかりと捉えているはずのスポットライトが、ふいに揺らぎ階段の奥へと落ちた。 綾は、目を細める。 光があまりにも強く、目の奥がじんと痛む。 スポットライトの下、逆光の中に立つひとつの影。 息を奪うほど鮮烈な、深紅のトレーン付きロングドレス。 生地一面に散りばめられた細かなクリスタルが、歩みに

Plus de chapitres
Découvrez et lisez de bons romans gratuitement
Accédez gratuitement à un grand nombre de bons romans sur GoodNovel. Téléchargez les livres que vous aimez et lisez où et quand vous voulez.
Lisez des livres gratuitement sur l'APP
Scanner le code pour lire sur l'application
DMCA.com Protection Status